はじめに
2022年1月電子帳簿保存法の施行により、企業は帳簿や書類などの国税関係書類を電子データで保存することが認められるようになり、さらに2024年1月からは原則電子データで保存することになりました。紙の保存と比べて、保存コストの軽減や省スペース化などのメリットがある一方で、電子化された書類には、複製や改ざんが容易にできてしまうというリスクもあります。そこで、電子文書が原本であることを担保するために導入されたのが、「タイムスタンプ」という仕組みです。ここではこの電子帳簿保存法とタイムスタンプについて説明します。
目次:
1. 電子帳簿保存法とは?タイムスタンプがなぜ重要なの?
電子帳簿保存法は、日本国内で電子帳簿を保存する際の基準や手続きを定めた法律で、企業や団体が電子的な形式で帳簿を保存する場合に適用されます。
ここでは電子帳簿の保存方法や期間、保存された情報の信頼性を確保するための要件を定めています。具体的には、電子帳簿を保存する際には、データの完全性や可読性、改ざんの防止などが保証される必要があります。また、保存期間も法律で定められており、会計帳簿などの場合は10年以上の保存が求められます。
タイムスタンプは、電子帳簿の内容が後から改ざんされたり、不正な操作が行われたりしていないかを確認するために重要です。信頼性の高いタイムスタンプは、電子帳簿が法的な証拠として有効であることを保証し、取引の透明性や信頼性を確保する役割を果たします。
2. PDFファイルにタイムスタンプを付与する必要性とは
以下に、PDFファイルにタイムスタンプを付与する必要性とメリット、利用シーンについて説明します。
(1) PDFファイルにタイムスタンプを付与する必要性とメリット
①データの完全性と改ざんの防止
タイムスタンプをPDFファイルに付与することで、そのファイルが特定の時点で存在したことを確認することができます。これにより、データの完全性が保たれ、後からの改ざんや不正操作が検知されます。
②法的な証拠としての有効性
例えば、契約書や重要な文書の場合、タイムスタンプが付与されたPDFファイルは、その内容が特定の時点で存在し、後からの改ざんがなかったことを証明することができ、法的な紛争や訴訟において、PDFファイルが信頼できる証拠として使用することができます。
③ドキュメントの信頼性と透明性: タイムスタンプを付与することにより、PDFファイルの変更履歴や作成日時が明確になり、ドキュメントの信頼性と透明性が向上します。特に、複数の関係者が関与する契約書や重要な文書の場合、タイムスタンプを利用することで、各関係者がドキュメントの作成や変更に関する情報を確認できます。
(2)タイムスタンプ付きPDFの利用シーン
①プロジェクト管理やバージョン管理
タイムスタンプを利用することで、プロジェクト管理やバージョン管理の際に、ドキュメントやファイルの作成や変更の履歴を追跡することができます。これにより、作業の進捗管理や問題の特定、コラボレーションの効率化が図れます。
②コンプライアンスや監査要件
タイムスタンプ付きのPDFファイルは、企業や組織がコンプライアンスや監査要件を満たすために使用されます。データの完全性や保存期間、改ざんの防止などの要件を満たすために、タイムスタンプを利用することが求められる場合があります。
3. PDFファイルにタイムスタンプを付与する方法
3.1 専用のソフトウェアを使用する手順
タイムスタンプを付与できるソフトはいくつかありますが、以下ではPDFelementの手順を説明します。
① PDFelement を起動し、署名したいPDF文書を開きます。
②ツールバーの「保護」→「文書に署名」をクリックして、署名を設定したい場所をクリックします。
③「文書に署名」 ウィンドウの「新規ID」をクリックします。
④「デジタルIDを追加」の「新しいデジタルIDを追加」をチェックし、「次へ」をクリックします。
⑤デジタルIDの保管場所を選択し、「次へ」をクリックします。
⑥適宜個人情報を記入し、「次へ」をクリックします。
⑦ファイル名を確認し、パスワードを設定して「完了」をクリックします。
⑧「文書に署名」 ウィンドウに戻るので、署名スタイルを変更したければスタイルで「新しいスタイルを作成する」を選択し、画像や表示テキストの設定を行い、「OK」をクリックします。
⑨「文書に署名」 ウィンドウに戻るので、パスワードを入力して「署名」をクリックします。
⑩ファイルに名前を付けて「保存」をクリックし、署名付きファイルが保存されます。
次回、保存済の署名を使う場合は、④で署名を選択できます。
3.2 オンラインのタイムスタンプサービスの利用
ソフトをインストールせず、オンラインでタイムスタンプが行える、以下のようなサービスも多数あります。
(1) MINDタイムスタンプサービス-DiaStamp-
・三菱電機インフォメーションネットワークが提供する、電子帳簿保存法や医療情報システムの安全ガイドラインに準拠したサービスです。
・利用料金:9万2,400円/年~ (1000通/月まで)
(2) リーテックスデジタル契約
・電子署名・タイムスタンプの付与、契約書・領収書・請求書の保存などの機能があります。
・利用料金:3,667円/月~ (360通/年まで)
(3) CLOUD SIGN
・弁護士の監修を受けた電子契約システムで、電子署名・タイムスタンプサービスを提供しています。
・利用料金:1万1,000円/月~、送信費用:220円/件
(4) freeeサイン
・文書作成・保管管理・契約締結・ワークフロー機能など、これだけで契約業務全体をサポートでます。
・利用料金:5,478円/月~、送信費用:220円/件、無料プランあり
4. 電子帳簿保存法のタイムスタンプに関するよくある質問
以下に、電子帳簿保存法に関連するタイムスタンプに関するよくある質問と回答を示します。
Q: タイムスタンプはどのように付与されますか?
A: タイムスタンプは、特定のタイムスタンプサービスプロバイダ(TSP)を通じて付与されます。TSPは、信頼できる第三者機関が提供するサービスで、タイムスタンプを生成し、それを電子帳簿に関連付ける役割を果たします。
Q:タイムスタンプの検証方法はありますか?
A: タイムスタンプの検証には、公開鍵基盤(PKI)やハッシュ関数が使用されます。タイムスタンプには、タイムスタンプ自体の署名と、電子帳簿のハッシュ値(一意の識別子)が含まれています。これにより、タイムスタンプの正当性と電子帳簿の完全性を検証することができます。
Q:タイムスタンプの保存期間はどのくらいですか?
A:タイムスタンプの保存期間は、電子帳簿の保存期間に従って設定されます。一般的には、電子帳簿保存法の要件に基づいて、10年以上の保存が求められます。タイムスタンプも電子帳簿と同様に保存する必要があります。
Q: 2022年1月の電子帳簿保存法の改正でタイムスタンプは不要になりましたか?
A: タイムスタンプの発行要件が緩和され、データの改変ができないシステムやサービスを利用している場合には免除が適用されますが、そうでない場合には、従来に引き続き、タイムスタンプを発行する必要があります。
まとめ
ここでは、電子帳簿保存法におけるタイムスタンプの必要性、PDFファイルにタイムスタンプを付与する方法等について説明しました。タイムスタンプ付与に関しては、オンラインサービスを使うことも可能ですが、利用料金を比較するとソフトを導入した方が割安となることが多そうです。
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