インボイス制度の導入により、多くの企業が業務フローや帳票のフォーマット変更を余儀なくされています。また、インボイス制度で定められた必要要件を満たさない場合には仕入税額控除が受けられなくなるため、より的確な対応が必要となります。
新しい会計業務のフローが請求書システムに適合しているか確認しながら変更するのは手間がかかります。そこで、事前にそれに対応した会計・経理システムを導入しておくのも一つの方法です。
今回は、インボイス制度の導入が制度にどのような影響を与えるのかを考え、新システム導入によるメリット・デメリット、インボイス制度と相性の良いおすすめのシステムを紹介していきたいと思います。
目次:
- インボイス制度の対応システムを導入すべき理由
- インボイス制度の改正に向けて必要なシステムとは
- システムを導入する時のポイント
- おすすめのインボイス制度の対応システム8選
- ・【PDFelement】請求書を簡単に編集できる高機能なPDFソフト
- ・【freee 会計】請求書の作成から発行まで役に立つ
- ・【会計王22】インボイス制度対応版会計ソフト
- ・【SAP】Peppolと関連されたシステム
- ・【楽楽明細】対応書類が多く、自動的に発行可能
- ・【弥生会計オンライン】法人向けのクラウド会計ソフト
- ・【白色申告オンライン】個人事業主向け無料で使えるクラウドソフト
- ・【MoneyForward会計】業務の効率化をサポートする会計ソフト
- まとめ
1. インボイス制度の対応システムを導入すべき理由
請求書システムにより請求プロセスも変わります。 会社の請求書システムをサポートするために手動で実行できる場合があります。
しかし、この機会に電子請求書システムを導入することをお勧めします。 電子請求書システムを導入することの理由を紹介します。
1-1. 税務手続きの効率化
電子請求システムを導入し、電子化を実現することで、大量の請求書を印刷するコストを削減することができます。 システムからワンクリックで請求書を相手先に送信できるため、封筒や郵送費が不要になります。 請求書をインターネット経由で送信できれば、神経を使う梱包作業も軽減されます。
請求業務全体の効率化に加え、会計・販売管理システムとデータ連携することで会計業務全体の効率化と負担軽減も実現します。
例えば、発行側では以下のような負担が軽減されます。
● 請求書や督促状の自動化
電子請求書システムから請求書を発行します。 また、支払い日時が近づくと相手に支払い依頼メールを自動的に送信し、支払いが行われたかどうかを確認することも可能です。
● 会計システムとの連携による業務の自動化
請求情報を自動的にロードします。 部門や勘定科目を自動仕訳することで転記ミスを減らすことができます。 入金確認から売掛金照合作業を自動化することで、常に入金状況を把握できる
受信者には次のようなメリットもあります。
● 郵送より請求書の受け取りが早い
● 発行側と同様に会計システム上で事後決済と記帳を連携・自動化することで記帳業務を軽減
● 将来の支払い金額をデータで可視化することで支払いの確実性が高まります
1-2. 誤りの軽減
いろいろな手違いや謝り、ミスを少なくするうえで、下記の2点はよくチェックしましょう。
● 発行・受け取りともに使いやすい
請求書業務には発行業務と受け取り業務があり、どちらか一方にシステムを特化してしまうと、もう一方の業務が滞ってしまうリスクがあります。 発行と受け取りの両方をバランスよく行うことが重要です。 使い勝手を確認するには、一部の機能が無料で利用できるシステムや、デモ画面が豊富なシステムを事前に選択するとよいでしょう。
● クラウドベースであること
インボイス制度開始から1年も経たない。 そのため、導入に時間がかかるとインボイス制度への対応が難しくなります。 一般的に自社開発のオンプレミス型は導入に時間がかかるため、スピードを重視する場合はクラウド型がおすすめです。 オンプレミス型は初期コストが高いため、クラウド型は初期コストを抑えたい企業にも適しています。
1-3. データのセキュリティ強化
徹底したセキュリティ対策が重要です。インターネットを利用する以上、十分なセキュリティ対策を講じる必要があります。 なりすましや不正アクセスにより情報漏えいが発生すると、企業に多大な損害を与えます。 セキュリティ対策が充実していることは必須ですが、必要に応じてセキュリティ強化のオプションがあるのは心強いです。
1-4. 現行のシステムの課題
既存のシステムとの簡単な統合が非常に大事です。現在利用している会計管理システムや販売管理システムとの連携が容易でないと業務効率が低下してしまいます。 リンクできない場合は手作業で転記することになり、間違いが発生しやすくなります。
また、現在請求書データをExcelで管理している場合は、CSVデータをインポートできるシステムを選びましょう。
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2. インボイス制度の改正に向けて必要なシステムとは
インボイス制度の開始に伴い、売り手側、買い手側双方に新たなルールが定められ、そのルールに沿った準備が必要となります。2023年10月1日の運用開始からスムーズに運用していくためには、システム改修や新システムの導入など、早期に検討・措置を講じる必要があります。ここでは、インボイス制度の開始により影響を受ける可能性のある制度についてご紹介します。
2-1. 会計システム
「会計システム」は、財務会計や管理会計などの経理・会計業務に特化したシステムです。 データ入力、帳票・財務諸表の作成、債権・債務管理、経営分析などの複雑な業務を一元化し、経理・会計業務の効率化を実現します。
インボイス制度が開始されると、非課税事業者やインボイス発行事業者以外の事業者からの課税仕入れは仕入税額控除の対象から外されます。 そのため、請求書と請求書以外の請求書は分けて管理する必要があります。
今まで必要のなかった作業でミスが発生することも多く、正しく分類できなかったばかりで仕入税額控除が受けられない可能性があります。インボイス制度に対応した会計システムを導入することで、これらを適切に分類・管理することが可能となります。
2-2. 請求書発行システム
販売者は、所轄の税務署に「適格請求書発行者登録申請書」を提出し、適格請求書発行者として登録し、登録番号を取得する必要があります。インボイス制度開始後、販売者は以下の項目を記載したインボイスを発行する必要があります。
①発行者の名称
②交付を受ける事業者の名称
③取引日
④取引内容
⑤取引金額
⑥軽減税率対象品である旨の記載
⑦ 税率ごとの対価額(税込)を合計した金額
⑧ 税率ごとの消費税額
⑨請求書発行者登録番号
さらに、発行された請求書のコピーを 7 年間保管する義務があります。なお、請求書を電子データとして保存する場合には、電子帳簿保存法の要件を満たす必要があります。このように、インボイス制度の導入により新たな要件が生まれることになります。新たな要件に対応した「請求書発行システム」を導入することで、請求書システムへのスムーズな移行が可能になります。
2-3. 請求書受領システム
購入者は、請求書システムで規定されている要件を満たしていない請求書については、仕入税額控除を適切に受け取ることができません。当然のことながら、適格請求書発行事業者でない事業者との取引は仕入税額控除の対象になりません。
そのため、インボイス制度開始後は、取引先が請求書の発行者であるかどうか、請求書の記載事項に漏れがないかを都度確認し、不備があった場合には取引を停止させていただきます。速やかに請求書等の再発行を依頼し、適切な対応を行ってください。さらに、受け取った請求書は 7 年間保管する義務があります。
このように、請求書を受け取るためには必要事項を確認し、状況に応じて適切に保管することが大切です。請求書を確認・保管する機能を備えた「請求書受領システム」の導入により、取引先ごとにフォーマットが異なる請求書であっても、適切に一括管理することが可能となります。
2-4. POSシステム
リテール・リユース向けのクラウド型POSレジとして、販売機能はもちろん、仕入機能、EC管理機能、顧客管理機能、分析機能など店舗に必要な機能を多数備えたオールインワンシステムです。
また、これらの機能を活用することで、業務効率の向上だけでなく、業績の向上や最適な顧客体験の実現も可能となります。
3. システムを導入する時のポイント
① 会計システムには請求書と請求書以外を分けて管理できる機能が求められます。
経過措置として、非適格請求書発行者からの仕入についても、2023年10月1日から3年間は仕入税額の80%、2026年10月1日から3年間は同様に仕入税額の50%を仕入税額として控除できます。ただし、この経過措置を適用するには、以下の要件を満たす必要があります。
仕入税額控除に関する経過措置の適用要件
・区分請求書等の保管方法に記載の事項のほか、「80%控除」等の経過措置の対象となる課税仕入れである旨を記載した帳簿の保管
・相手方発行の請求書等と同一内容の請求書の保管
・料金体系は記載事項に該当するかがポイント
② 請求書は従来の分割請求書に比べて記載すべき項目が増えています。したがって、請求書発行システムは請求書の記載と一致しているかどうかを確認する必要があります。
また、請求書では消費税の四捨五入ルールを統一し、商品ごとではなく税率ごとの合計金額で四捨五入することとなります。 請求システムには、このような請求ルールに準拠した機能が必要です。 発行された請求書は7年間の保存が義務付けられているため、データ保存に関する機能の確認は必須です。
③ 販売管理・受発注システムには課税事業者と非課税事業者を識別する機能が必要です。
販売管理・受発注システムには、取引先ごとに課税事業者か免税事業者(適格請求書発行事業者ではない事業者)かを識別できる機能が必要です。 課税と非課税の区別ができない場合、仕入税額控除に使用する書類を分類するのに多大な手間と時間がかかります。
また、販売管理・受発注システムには請求書発行機能を備えているものもあります。 その場合も、上記の料金体系と同様の点に注意してください。
④ POSレジやPOSシステムは軽減税率に対応していますか?
小売店や飲食店など不特定多数への販売を伴う取引では、領収書を請求書の代わりに適格簡易請求書として利用することができます。 ただし、この場合でも登録番号や税率別の適用税率などの項目を入力する必要があります。
商品ごとの税率を把握する必要があるため、軽減税率に対応したPOSレジ・POSシステムの導入が必要です。
⑤ EDIシステムで送受信される取引情報は保存する必要があります。
EDIは「Electronic Data Interchange」の略で、企業間の取引情報を電子データとして交換するシステムです。 EDIシステムを利用した取引の場合、請求書も電子的にやり取りされます。
EDIシステムで送受信される請求書に係る取引情報は電子取引であり、2022年1月施行の改正電子帳簿保存法により電子保存が義務付けられています(2023年12月末までは免除期間あり)電子帳簿保存法に対応した電子帳簿保存システムの導入を検討されることをお勧めします。
⑥ 請求書受け取りシステムは業務効率化につながりますのか?
取引のために受け取った請求書は 7 年間保管する必要があります。 また、不適格請求書発行者以外の請求書であっても、原則として7年間の保存が義務付けられています。
請求書受領システムで受け取った請求書を自動でデータ化できれば、文書管理や会計業務の効率化につながります。
4. おすすめのインボイス制度の対応システム8選
4-1. 【PDFelement】請求書を簡単に編集できる高機能なPDFソフト
● 校正/要約/翻訳などAIツール搭載、PDF作業効率がさらに向上
● どのデバイスでもアルタイムに文書の署名ステータスを追跡・管理できる
● 異なる形式へ高画質で変換可能
PDF、変換、注釈など、PDF 関連のすべてのタスクに役立ちます。 作業の効率化を促進し、有効期間中はいつでもアップデートに対応するコストパフォーマンスの高い製品です。
Windows版とMac版があり、メモ書き、画像からの転記(OCR機能)、PDFフォームの作成・入力、電子署名の入力などが可能です。
4-2. 【freee 会計】請求書の作成から発行まで役に立つ
● 法制度の開始や変更にもスムーズに対応
● 債務と支払いの管理を合理化および自動化する
● 損益状況とキャッシュフローを見える化する
freee会計は、請求書制度や改正電子帳簿保存法に完全対応したクラウド会計システムです。 借金や支払いの管理、与信・預金管理業務の効率化に役立つ機能を豊富に搭載しています。
4-3. 【会計王22】インボイス制度対応版会計ソフト
27年のロングセラー実績を誇る会計ソフト。 常にアップデートを続けており、免税などの経過措置の項目を追加するなど、長く使える対応力が売りだ。
クレジットカードや銀行などの金融機関と連携すれば、明細の自動取り込みや仕訳まで可能となり、記帳の手間が大幅に軽減されます。
4-4. 【SAP】Peppolと関連されたシステム
電子請求書の導入により業務効率の向上とガバナンスの強化が期待できることがわかります。 また、日本語版Peppolに準拠したシステムを利用することで、企業間のシステムの違いによる人的作業やシステム改修が不要になります。
4-5. 【楽楽明細】対応書類が多く、自動的に発行可能
● 各種帳票をクラウド上で簡単発行
● 送信方法ごとに自動で振り分けられます
● 無料のデモ版が利用可能
らくらくは請求書・納品書・支払明細などの各種帳票をクラウド上で発行できるシステムです。 フォームデータをシステムにアップロードするだけで、オンライン送信、メール添付、郵送などで自動振り分けが可能です。
4-6 【 弥生会計オンライン】法人向けのクラウド会計ソフト
弥生会計 オンラインは、個人事業主や中小企業から高い支持を得ている会計システムです。請求書の仕訳や消費税納付見込額の合計ができるので、消費税の納付も可能です。
4-7. 【白色申告オンライン】個人事業主向け無料で使えるクラウドソフト
「白色申告オンライン」は日々の帳簿付けから確定申告書類の作成まで、会計ソフトの基本機能を全て備えています。 専用のスマホアプリも無料で提供されており、スマートフォンから記帳することも可能です。 このソフトウェアを使用すると、電子ファイルを作成することもできます。
4-8. 【MoneyForward会計】業務の効率化をサポートする会計ソフト
クラウド型会計ソフトなので、オンラインでいつでも会計データを取引先と共有でき、インストール型会計ソフトに必要なデータのインポートが不要です。請求書や経費精算など、マネーフォワード クラウドの他のサービスと連携することで、会計以外の業務工数を大幅に削減できます。
5. まとめ
今回は、インボイス制度を支援するシステムを導入するメリット・デメリットと、話題になっているおすすめのシステムをご紹介しました。 新しいシステムの導入には十分な準備が不可欠です。
また、現状の業務フローが変わった場合、スムーズに移行するには従業員一人ひとりの意識の変化に対応する必要があります。
今回の制度変更は仕入税額控除の重要な要件となるため、準備漏れや導入後の人的ミスは避けなければなりません。請求書システムの導入に伴うシステムの導入により、経理・会計業務の完全デジタル化が期待でき、業務の精度が向上するだけでなく、業務の効率化やコスト削減も期待できます。
ぜひこの機会に、今回ご紹介したような制度の導入をご検討ください。
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